経済学エアプ大全~経済学編~

この記事はB4UT Advent Calendar 2020の記事です。素晴らしい記事が続々と投稿される予定なのでぜひチェックしてみてください。

 

 1.前書き

実際には対象経験がないにもかかわらず、などの信頼できない情報や当事者の思い込みなどを基にした知識を用い、経験者として対象を語る行為を指し、場合によってはこの行為を行う人物もそう呼ばれることがある。

ピクシブ百科事典」より「エアプ」の項目から引用

 

人類ってエアプ好きですよね?私も皆さんと同じ人類なので、このエアプ記事をかけて嬉しい限りです。

どうも私「ば」と申します。

さて冒頭にも触れましたが、人類という生命体は有史以来エアプを非常に好むことで知られています。 この記事をお読みの皆様もエアプをしたくて発作がでている最中なのではないでしょうか?

しかし、環境に刺さるエアプというのはなかなか難しく、一説によるとデュエマにおいて環境に刺さるデッキを探すくらい難しいとのことです。(ちなみに筆者のデュエマの知識は10年前のコロコロコミックが全てなのでこの一節もエアプということになります。)

csbs.shogakukan.co.jp

 

でも、ご安心ください。初心者でもこれ使っとけば刺さる分野が存在します。

それが……

 

 

 

 

 

経済です。

 

 

 経済というのは

・「経済学部生なら上座下座に始まるマナーを知っておくべき」

・「需要は価格に影響を与えない」

 といっためちゃめちゃ面白い言説がTwitterで見られるくらい非常にエアプが盛んな学問として知られています。

特にここ最近は新型某某某某イ某某感某某の影響もあって経済のエアプにうってつけの環境がすでに構築されています。今一番アツいエアプは経済にあるといっても過言ではありません。(「~とか経済エアプか?(以下自分の言説)」とか言ってる人間の意見もエアプやったりしてめちゃめちゃおもしろい)

 

しかしながら皆さん下手に経済でエアプすると炎上が怖いですよね?

そこで今回は経済学の権威を借りて安全圏からエアプをするために、経済学の基本的な(経済学部生なら知ってるような)用語・知見に解説と用例をつけて紹介していきたいと思います。

 

なお、この文章を著すに当たっては経済学部3年生の「かてごり」様の多大なるご協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

ちなみにその「かてごり」様ですが、なんと偶然にもこの記事と同日に経済学エアプ大全 ~経営・会計学編~」なる記事を上げております。あわせてご覧いただくことで経済学及びその周辺分野において、かなりのエアプ力が身につくと思われます。

 

 

 

 2.ミクロ経済学

ミクロ経済学は「消費者・企業などがどう行動するか」「その結果社会がどうなるのか」を分析する学問です。人々の行動や社会について基本的な構造を知ると色々応用が利きます、知らんけど。

効用

▼定義

財を消費することで得られる嬉しさ

▼解説

「人々はどのように行動するのか?」と考えたとき、(ミクロ)経済学では「できる限り一番うれしくなるように行動している」としています。より具体的には「予算の範囲内で、一番”うれしく”なれるようにモノを買う」といった感じです。ここで得られる”嬉しさ”を経済学では効用と呼ぶわけですね。

消費者の行動を考えるときの中心的な概念であり、(理論的には)需要曲線も効用の最大化をもとに導出されます。

▼使用例

雑に政策に反対したいときに「その政策では○○(主婦など適当な属性を入れよう!)の効用の損失が~」とか言ってみるといいと思います。

あと「人がそのような行動を選択したのはその行動が効用を最大化するから」との解釈もできるので、何とは言わんまずいタピオカ飲んだ人に「効用最大化できましたね^^」とかリプ送るといい感じに地獄が生まれると思います。

 

利潤

▼定義

売上から費用をひいたもの 

▼解説

もうそのまま。経済学では企業はこれを最大化するように活動している、具体的には「生産量や雇用量などを選択している」とします。効用と同じく、企業の行動を考えるときの中心的な概念であり(理論的には)供給曲線もここから導出されます。

▼使用例

後の話に繋げるための概念なので特に思いつきませんでした。

 

競争均衡

▼定義

完全競争市場の元で成り立つ均衡

▼解説

例えばある財の価格がめちゃめちゃ安かったとします。すると効用最大化を目指す消費者は(ごく例外を除いて)割安なその財をいっぱい買おうとしますが、利潤最大化を目指す企業は儲けにならないのでそんなに供給しないといった状況が起こります。超過需要が存在しているわけですね。

こんな時は、市場メカニズムが働いて価格が上昇することでこの超過需要は解消されます。

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1財での均衡のイメージ図(ほぼ中学で習うアレ)

競争均衡というのはこのような市場メカニズムが働いて価格が調整された結果、すべての財について超過需要・超過供給が起きていない状態のことを指します。

「全てなんて……そんな都合のいい状態あるの?」と思う方もいるかもしれませんが、理論的には完全競争市場のもとではほぼあることが証明されています。

▼使用例

後の話に繋げるための概念なので特に思いつきませんでした。2

 

パレート効率的

▼定義

誰かの効用を下げないと別の誰かの効用を上げられない状態

▼解説

こんな例を考えてみましょう。

 

A君:メイン機種ボルテ。初プレー時に友人にノーマルを投げられたのがトラウマで弐寺はやっていないが、なぜか弐寺の専コンを持ってる。

B子ちゃん:メイン機種弐寺。つまみが苦手なのでボルテはやっていないが、なぜかボルテの専コンを持ってる。

 

 ……この状態ってなんかこう、もどかしくないですか?

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もどかしくない?

この状態では、二人が専コンを交換することで 

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よかったね!

ほら!二人ともうれしそう!!!

このように誰の効用(幸せ度)も下げることなく誰かの効用を上げることをパレート改善といいます。この状態では二人とも効用が高まっていますね。

そしてこれ以上パレート改善ができない(誰かの効用を下げないと誰かの効用を上げられない)状況のことをパレート効率的パレート最適とも)といいます。

さて、望ましい社会を作るにあたってパレート改善できる部分はやり切ってしまったほうがいいですよね?ということで政策を経済学の視点から判断するときには「パレート効率的になるかどうか」というのが重要な指標となります。

ただしこの指標は不平等には言及してくれないのが玉に瑕です。

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パレート効率的ではあるが…

B子ちゃんが富めるものになってしまいましたが、この状態もパレート効率的ではあります。A君の効用を上げるにはB子ちゃんが身銭を切るしかないので。

▼使用例

雑に政策に反対したいときに「その政策って(パレート効率性の意味で)非効率的だよね」とか言っとくといいと思います。

ちなみにこのパレート効率性の意味での「効率」は効用(幸せ度)についてしか語っていないので、経済学者がこの意味で語る「効率」に「”効率”(時短や人員削減などの意味)を追い求める経済学者が国を貧しくする!」などとかみつくと非常にいいエアプになると思います。

 

厚生経済学の基本定理

▼ 定義

市場経済(原義)最高~!!!!!」を示す定理

▼解説

まず第一定理の主張から述べると「競争均衡はパレート効率的である。」というものです。要するに「市場に任せると嬉しい!」ってことですね。

ただし先ほども述べたようにパレート効率性は不平等には対応してくれません。「市場経済は格差を生む!」みたいな声が聞こえてきそうです。

そこで出てくるのが第二定理で、その主張は「任意のパレート効率的な状態は、適切な再分配を行うと、競争均衡として実現できる。」というものです。

これは無数に存在するパレート効率的な状態の中から

  1. いい感じの再分配を行う
  2. 市場に任せる

で好きに一個選べることを意味します。これをうまく利用することでパレート効率的かつ平等な社会を目指すことができます。市場経済最高~!

 

この定理から”よい”政策は「適切な再分配」と「競争均衡の障害となるものの排除」のどちらかになります。後者に関しては”独占”の他に”市場の失敗”と呼ばれるものがあるので、そうした影響を排除してパレート効率的な水準にする(近づける)ことが重要になります。独占禁止法や情報開示なんかは割とこの側面が見て取りやすいと思います。

 

(12/3追記)逆に言えば何でもかんでも市場に任せていいわけではなく、こうした対策は行うべきということが言えます。ガチの市場原理主義者と思われたくないので強調しときます。

▼使用例

雑に政策に反対したいときに、その政策が「適切な再分配」か「競争均衡の障害となるものの排除」のどちらかでなければ厚生経済学の基本定理を持ち出して市場経済の偉大さで殴りましょう。

 

外部性

▼ 定義

市場を介さない影響。市場の失敗の一つ。

▼解説

よくある例は公害です。

企業が工場でモノを生産するときにきったねえ廃水を垂れ流すとしましょう。企業の利潤最大化にはこの廃水は何にも関係ありませんが、社会全体の被害としては甚大です。

このとき企業にちょっと我慢させれば社会全体の効用はめちゃめちゃ改善されます。さらに言えばこの増えた効用分を企業に再分配すれば企業の我慢分も補填でき、パレート改善も可能となります。

何も対策しないと効率的にならないのは、公害の影響が市場に表れないことで「社会の被害≠企業の被害」となり被害を受けない企業が自分勝手に過大な供給を行ったのが原因です。このように市場を介さずに周りに悪影響を与えてしまうことを負の外部性といい、負の外部性が存在する行動は過大に行われます。ほかの例としては感染症蔓延時の外出とかですかね。

解決策は単純で「何らかの方法で過大な行動を我慢させる」になります。税や補助金インセンティブを与えたり法規制したりとかです。

 

逆に市場を介さずに周りにいい影響を与えることを正の外部性といいます。この行動は社会にいい影響があるのに本人に得がないので過少にしか行われません。この解決策は「何らかの方法でもっとやらせる」になります。

またここでは省略しますがほぼ同じ議論で「公共財」について語ることもできます。

▼使用例

知識・技術は正の外部性がある(公共財)と考えられるので、「研究開発費削れ!」とか言ってるやつはこれで経済学から殴りましょう。ほかにも割と使いどころがある概念です。

あと気に食わないことしてるやつがいたときに「負の外部性出てますよ!」とかリプするとエアプできてると思います。

 

 

3.マクロ経済学

マクロ経済学は、一国の生産量や消費、雇用などの「国全体の経済の動き」を分析する学問です。経済政策を語るときはこちらも重要になります、知らんけど。

有効需要

 ▼定義

経済全体の需要(不正確)

▼ 解説

ミクロ編では「市場メカニズムにより価格が調整され、競争均衡になる」と紹介しましたが、短期的にはそんなすぐすぐ価格って調整されません

価格が調整されない世界では、どのように需給一致するのでしょうか?需要量に供給量が合わせる形になります。人々が欲しいと思った分しか売れないわけです。もし需要量が少ないと、供給量も小さくなり失業が生じてしまうことになり不景気となってしまいます。

そうしたときは金融政策によって金利を引き下げて投資を喚起したり、財政政策で政府購入を増やしたりすることで需要を底上げすることが望まれます。

▼使用例

不景気の時に安直に財政政策を求めましょう。10万円給付を要求する時にも使えると思います。

 

経済成長理論

▼ 定義

経済成長を研究する分野。

▼ 解説

マクロ経済モデルを用いて経済成長について分析する分野です。いろんなアプローチがあって一概には言えないのですが、とりあえず重要な主張としては「技術進歩率が長期的な成長によい影響を与える」というものがあります。

▼使用例

教育にかかる予算や研究費の削減などがあった際にこの理論を雑に持ち出すことができると思います。

 

4.補足のようなもの

4-1.ミクロ編

 今回は厚生経済学の基本定理を最速で紹介するために結構な省略をしています。

「どんな時に効用・利潤は最大化されるの?」

「競争均衡が成り立つ条件は?」

「適切な再分配って何?」

「市場の失敗って他に何があるの?どうすれば解決できるの?」

などです。この辺りもミクロの教科書に書いてたりして、しかも結構エアプできるので興味を持った方は参考文献などご覧ください。気が向いたら自分もまた書くかも。 

 

4-2.マクロ編

ほんとはIS-LM分析とかインフレとか失業とかフィリップス曲線とか語りたかったんですが、結構体系的な知識が必要なのと気力・締め切りの問題から本当にさわりだけです、お許しください。改めてこの記事見たらミクロと比べて内容薄すぎて泣いちゃった。

また「価格が調整できない短期では~」といった形でミクロとはガラッと変わった分析のように感じるマクロですが、これも実は昔の話で現在のマクロ経済学はかなりミクロ寄りになっています。というのもやっぱり効用・利潤最大化から行動を導き出せるのが社会を説明するにあたり非常に強力だからです。ミクロ的なものをベースに価格が調整できない状況を取り込んで分析していたり、効率性などの議論をしていたりします。

 

4-3.関連分野の紹介

エアプに使えそうな経済学の応用分野をエアプでご紹介します。ちなみにこれらの分野でもわりと効用・利潤の最大化が大活躍します。

 

  • 財政学・公共経済学

今回のエアプは政策メインだったので政府の活動を研究するこの分野は関連深いと思います。ミクロとマクロ両方使う(ミクロ寄り?)。

 

労働市場、労働問題を研究する分野、エアプのし甲斐があります。どちらかというとミクロ寄り。実証研究もするので統計学もあるといいかも。

 

  • 産業組織論

ミクロを使って企業の活動を詳しく学ぶ分野です。独占とか企業の行動を学べるので面白いと思います、知らんけど。

 

貿易とか為替レートとか学ぶやつです。多分ミクロマクロどっちも使います。

 

途上国の成長とか学ぶやつです、意識高い人が好きそう。成長理論や貿易なんかをよくやりますが、真面目にやると法学や社会学など広い知見が求められると思います。

 

人々の行動、特に相互作用や情報の扱いを丁寧に定式化した学問です。その性質からミクロと仲良しで、ミクロと同じく数学が難しいです。(人間行動の定式化は非常に大変なので)

 

心理学を混ぜたやつです。みんなミクロやらずにこれがめちゃめちゃ好きな傾向にありますが(ド偏見)、ミクロしっかりやってからこれとの差を意識したほうがいいと思うけどなあ。

 

5.謝辞

まず、繰り返しになりますが、この記事を書くに当たってご協力いただいた経済学部同期の「かてごり」様に感謝の意を表したいと思います。

 

次に申し上げたいことは「筆者もエアプ」だということです。このことを踏まえた上で以上の記事を温かい目で見ていただければ、こちらとしてはうれしい限りです。

 

そして最後にちょっと真面目な話になります。

まず強調したいのが経済学の知見と一般の経済観には割とギャップがあるということです。

ここで経済学が絶対的に正しいなどというつもりは全くもってありません。というかこの世に経済プレイ済みの人間なんていないのでどちらも等しくエアプです。

しかしこのギャップ、特に”言語・思考の違い”は時に議論において非常に大きな障害となります。

経済というのは複雑で分析も予測も難しいわりに実生活に非常に密接に絡むので、そうした経済現象に取り組んでいる経済学は批判されがちです。これは実際経済学が不完全な部分(完全競争市場に依存した議論とか。でもこれは割とマシになってると思う、エアプやけど。)も多いのですが、先述の言語の違いも批判される要因の一つなのではないかと考えています。

そこでそうした”言語の違い”を少しでも解消出来たら、あわよくば読者の皆さんが経済学に興味を持ってくれたら……そんな思いがこの記事を書いた理由の半分です。(もう半分はかてごり君との通話中に盛り上がったからです。)

皆がこうした言語・考え方を共有した上で、エアプだろうと議論ができれば、よりよい経済学に、ひいてはよりよい社会に一歩近づくんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……知らんけどw(エアプ)

 

 

 

 

6.参考文献

 とりあえず初見でも読みやすいものとして以下をあげておきます。

www.amazon.co.jp

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